
海辺の別荘ライフをもっと身近に、もっと自由に楽しむ。そんな思いから生まれたサブスクリプションサービス「WITH SEA」。海と共に過ごす “ひととき” を提供するというブランドコンセプトを共有し、実現に向けて力を注いでくれるパートナーたちの存在が、私たちにとって欠かせない存在です。『WITH SEAをつくる人』は、そんな頼もしい仲間たちを紹介するインタビューシリーズです。
第1回は、神奈川県真鶴町にWITH SEAのフラッグシップモデルを築き上げた、齋藤工務店の山川洋介さん。地元の風土を深く理解し、素材選びや設計手法に丁寧に向き合いながら、WITH SEAの”代表作”を形にしてくださいました。
本記事では、真鶴という土地に根ざした建築のあり方や、山川さんの建物づくりに込めた想いを紐解きます。

プロジェクトへの参画
「私たち齋藤工務店は、これまでUMITOさんが手がける賃貸マンションやラグジュアリーホテル「UMITO」の設計に携わってきました。数年前に別荘サブスク事業が新たにスタートするということで、堀社長から直接オファーをいただいたのが、このプロジェクトに参加するきっかけです。」
空間設計に込めたテーマ
「このプロジェクトでは、サブスク事業のフラッグシップ(※)となることを目指して、シンプルでありながら記憶に残って、特徴的でわかりやすい外観となることを意識して設計をしました。内部空間に関しては、高級感と非日常、居心地の良さを両立させることを重視しました。また、WITH SEAのコンセプト「海と共に過ごす”ひととき”」を具現化するために、すべての空間設計において、海を感じられることをテーマに据えています。さらに、3棟が連なるという本プロジェクトの特性を踏まえ、完成時には3棟が一体となって魅力的な町並みを形成するような構成を意識して設計しました。」
フラッグシップ … 企業が特別な力を注いで展開する最高級の製品やサービス、店舗、モデルなどを指す。

素材・色・かたちへのこだわり
「外観は特徴的なボード屋根(※)を採用し、シンプルでありながら存在感のあるデザインに仕上げています。また、壁の仕上げは真鶴岩海岸の町並みに調和するように、もともと形状が非常に特徴的なものになっているので、コンクリート打放しの落ち着いたグレーを選びました。内部は、ボード屋根の柔らかな曲線を活かした空間を強調するように、アイボリー系の左官仕上げ(※)を採用することで、温もりのある空間を演出しています。」
ボード屋根 … 屋根の下地材としてボードを使用する屋根。ボードには断熱材や吸音材、遮熱材などがある。
左官仕上げ … コテを使って壁や床を手作業で塗り上げる、日本の伝統的な仕上げ工法。

設計で挑戦した新たなアプローチ
「今回の建築で新しく挑戦したのは、ワンルームの大空間の中に多機能を集約しつつ、それぞれの特徴を活かした設計をすることです。今回だと、浴室・サウナ・LDK・寝室などの機能を1つのワンルームの空間に配置しながらも、それぞれのエリアが自然に使いやすく心地よく過ごせるよう工夫しました。特に浴室とサウナは海を眺める配置にすることで、利用中でもWITH SEAのコンセプトを体感できるようにしています。」

機能美と持続性を両立するための工夫
「機能面では、ワンルームの空間の中でも可変性を重視し、1階リビングの奥に引き戸を設けています。引き戸を閉じればセカンドベッドルームとして、開ければリビングの延長として利用できる、柔軟な設計になっています。持続可能性の面では、建築が長く使い続けられるような設計と、地域資源の活用を重視しました。耐久性の高いRC造(鉄筋コンクリート造)(※)を採用し、将来的なメンテナンス負担を軽減しています。外壁の一部には、真鶴地産の小松石を取り入れ、地域との繋がりを感じられる素材選びを通して、持続可能なアプローチを実現しています。」
RC造 … 耐震性や耐火性、防音性、耐久性に優れた工法。自由度の高い設計が可能で、さまざまな間取りに対応できる。
心地よさをかたちにするための空間設計
「家具や内装には、ラグジュアリーホテル「UMITO」で使用されているオーダーメイドのものを採用しつつ、くつろぎやすさと高級感の両立を図りました。素材や色調には柔らかいトーンを選び、長時間過ごしても居心地が良い空間を演出しています。さらに、内部空間の導線や機能性にも配慮し、ご利用される方が直感的に使いやすくストレスのない空間づくりを目指しました。」

地域と交わした対話が、心に残る体験に
「今回の建物の特徴であるボード形状の屋根について、当初は真鶴の町並みに馴染むかどうか町役場の方からご指摘がありました。ですが、建築が進むにつれて少しずつ建築の全貌が明らかになると、地元の方から「オシャレな建築で岩海岸がより魅力的になるね。」と嬉しいお声をいただけるようになりました。地域の皆さまからそのようなお声をいただいて、建築がその地域にどう影響するかを改めて考えさせられる貴重な経験となりました。」
プロジェクトがもたらした学びと発見
「このプロジェクトを通じて、建築が持つ造形美の重要性を改めて実感しました。今回はヴィラタイプのホテルという新しい取り組みでしたが、この経験を通じて宿泊施設における空間設計の新たな可能性を見出すことができました。また、海との一体感を生むためのレイアウトや機能性・デザイン性の両立といった課題に対処する中で、これまでに無いアイデアや視点を得ることができたと思います。」

プロジェクトを終えて思う事と、これからの展望
「WITH SEAのフラッグシップとして、一度は泊まってみたいと思っていただけるような、印象的で魅力ある建築に仕上がったと感じています。この建築が提供する非日常の体験を通じて、海との繋がりや特別な”ひととき”を感じていただけたら幸いです。WITH SEA真鶴がサービスの象徴的な施設としてより多くの人に愛され、サービスの価値向上に貢献してくれることを願っています。」
山川さんのインタビューの様子は、映像でもご覧いただけます。
建築家・山川洋介

1991年 東京生まれ。日本大学理工学部建築学科卒業。2014年に株式会社齋藤工務店に入社。以降、高級住宅、商業施設、共同住宅の設計及び施工を手掛ける。2019年に社内にて設計施工ブランドの「TORYO」を立ち上げ、設計施工が一貫したきめ細やかな洗練されたものづくりを目指している。